T ケア・マネジャーが利用者のためにケア・プランを作成する場合、考慮すべき点はまず次の三点になります。
@ 利用者の希望を取り入れること。
A 利用者の自立を高める計画を作成すること。
B 介護保険法等に従うこと。
U さらにケア・マネジャー側を選択する基準があります。
@ 連携が取りやすく信頼できる事業者を選択する。
A サービス担当者会議にきちんと出席する事業者を選択する。
B 問題(クレーム)を起こした事業所は選択したくない。
V さらにケア・マネジャー側の都合があります。
@ ケア・マネジャーが良く理解しているサービスを重視する。
A 事業所の経済的な都合。
B 介護保険法等を自分の思い込みで勝手に解釈し、それを尊重している。
以上九点について総合的に傾向と対策を解説します。
「T」の三点は相矛盾する部分が多いようです。
しかし、利用者の希望するサービス、と利用者に必要なサービスの二つの矛盾は、ケア・マネジャーが丁寧に説明し、専門家の意見を聞き、時間をかけ、必要ならば段階的に行う事により解決できるものです。
介護保険が施行される前から想定の範囲内でした。
問題は@Aと介護保険法等との間にあります。
本来、介護保険法と@Aの間に矛盾はありませんでした。
介護保険法は要介護者とその家族をささえる為に作られた、大変すばらしいものでした。
しかし、財政的にお金が足りない、という問題が発生してしまいました。
当初、介護に疲労している家族さえささえる介護保険、という理想も一部書き換えられてしまいました。
厚生労働省発のQ&Aと言う形で介護保険法の目指していた方向を修正しました。
利用者の希望の一部をわがままとし、わがままを認めないことにしました。
直接の介護サービスを主流にして間接的なサービスを排除しました。
家族の負担を軽減する事も必要であると考えていた部分を排除すると言う事です。
具体的には次のような禁止が行われています。
利用者が家族と同居している場合、生活援助が利用しにくくなりました。
連続して一時間半以上は生活援助サービスが提供できなくなりました。
たとえ利用者から自費でサービス提供を依頼されても利用料を取ってはいけない、と決めました。
無料ならいくら行っても良いです。
市区町村によっては家族と同居している場合の生活援助は原則禁止している所もあります。
これらの利用しにくい部分は法律で明文化されていない部分もあり、都道府県の指導により、市区町村の窓口が独自に判断し、指導しているケースが多く見られるようになりました。
生活援助は買い物・掃除・洗濯・炊事等であり、家族が行うべきであり、介護保険のサービスとして相応しくなく利用者のわがままである、と考え方にかわりました。
車椅子、特殊寝台などの介護用品のレンタルサービスに介護度による利用制限が設けられました。
要介護度2以上ならレンタルサービスを利用できるが要介護度1以下は原則として利用できない事となりました。
第三者的に見て、必要の無いサービスは利用者の意向、希望と無関係に排除されました。
実際は今まで寝台等を利用していた利用者に対しては、いきなり取り上げる事は無く、何らかの措置が市区町村でとられたのが、せめてもの救いでした。
今まで貸与に相応しく無い介護用品(ポータブルトイレ・シャワーチェア 等)は利用者が自ら購入し、購入後、購入金額を介護保険が実費を返還する事になっていました。この際、購入する店舗はどこでもよかったのですが、許可を得た指定事業者からしか購入できなくなりました。
利用者が専門家に相談もせずに、勝手に購入した物まで介護保険は面倒みません。
それは わがままです、と言われてしまいました。
介護支援専門員に対しても、指導が強化されました。
不適切なケア・プランを作成した場合、介護計画作成の報酬を保険者は支払わない、また支払い後不適切が発見された場合、遡って返還しなければなりません。
この場合不適切とは、介護保険法等もしくはQ&Aで示されている事と理解・解釈で少しでも相違点があれば不適切と決められてしまいます。
介護支援専門員がどんなに利用者のことを思い、法律を遵守して業務を行っても、その記録を作成し保存しておかないと業務を終了したとみなされないで報酬は支払われません。
市区町村としては記録に残してあるもの以外ではサービスを評価できないからです。
事業所の選択に関しても、指導が厳しくなりました。
特定のサービス事業者を介護計画に一定の割合以上いれると、介護計画作成費が減算されます。
訪問介護・通所介護・福祉用具貸与のサービスに関して特定の事業者に90%以上利用が集中すると減算の対象になります。
別個の事業所として登録してあっても経営母体が同一なら同じとみなします。
これは介護支援事業所が介護計画作成を依頼されている利用者の内、一種類のサービス、例えば訪問介護を利用している場合すべての利用者の内
何%が特定の事業者であるか、ということです。
医療機関への指導が強化されました。
利用者には喜ばしい事ですが、居宅療養管理指導を医師が行っている場合、ケア・マネジャーが開催するサービス担当者会議に医師の出席が義務付けられました。
サービス事業者への指導が強化されました。
サービス事業者に対しても、書類・記録等の整備に関する指導が強化されました。
利用者のクレームに市区町村がきちんと対応する様です。しかし問題は利用者の意見を汲み取ることのむずかしさにあります。
利用者の本当のクレーム・ただの愚痴・介護保険制度の理解不足などの見極めが必要となります。
介護事業者に支払う費用の適正化も進めています。
新予防給付の創設
新予防給付という制度が作られました。
今までは、要支援・要介護1―5までの六段階に認定された場合、介護保険によるサービスが受けられましたが、新予防給付という制度が出来、要支援T 要支援2 要介護1―5までの七段階になりました。
この内、要支援1と要支援2は新予防給付の対応となりました。
要介護1―5は今までどおり介護保険の対応となっています。
新予防給付は全体の40%位が相当する様です
新予防給付は介護支援事業者ではなく、地域包括支援センターが対応します。
新予防給付では訪問介護が介護予防訪問介護と呼ばれ、事業所に対する報酬体系も新しくなっています。
また利用者が受けることの出来るサービスの分量も変化しています。
一概には言えませんが、報酬は減額され、分量は減ることは可能性として高いです。
まとめ
介護支援専門員として制度発足時から活躍していた方の中では、今やめられた方も多いようです。
理由はさまざまであると思いますが、介護保険に抱いていた理想に裏切られた方、利用者のためにがんばりすぎて身体を壊した方、燃え尽きた方もいらっしゃると思います。
また事業者の中にも、保険者の返還要求に納得できずに事業所を畳んだケースもあると聞いています。
介護保険制度自体まだまだ揺れ動いている時期ですので、いろいろな事がこれからも起きると思います。
しかし、この制度はとても良いものです。
縁あって介護保険の一翼を担うようになった以上、もう少しがんばってみようと思います。
利用者と事業者どちらも大切にしてくれる介護保険に成ることを祈ります。
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